医学部は、理学部や工学部のように専攻が決まっているわけではありません。診療科ごとに学生が医学部内でそれぞれ分かれて学ぶのではなく、全員が全診療科の勉強を一通りするのです。
それでは、いつ自分の専門分野のみに集中するのかと言いますと、大学を卒業して研修医として2年の前期研修を終えた後にやっと何科の医者になるかを決めるのです。
それまでいったいどのような勉強をするのか、大学ごとに細かなカリキュラムは異なりますが、以下に詳しく書いていこうと思います。
1年
教養課程と呼ばれ、高校の科目と同じような化学、物理、数学などを学びます。高校の時よりもより難しい内容を学びます。その他には、第二外国語や選択科目(文学、宗教学、哲学など様々)があります。1年生は医学に関することはほとんど学びません。
2年〜3年
2年生から待ちに待った医学の勉強が始まります。2年〜3年生は基礎医学を学びます。基礎医学とは、解剖学,生理学,生化学,薬理学,病理学,細菌学などの種類があり、人体の構造や機能、病気や薬の機序に注目する学問です。
4年
4年生は臨床医学を学びます。臨床医学とは、病気の人を治すための実践的な科目であり、診断や治療法等を勉強します。内科学,外科学,産婦人科学,小児科学,脳神経外科学,皮膚科学,眼科学,耳鼻咽喉科学,泌尿器科学,精神医学,放射線医学などがあります。
そして、4年生の最後には、CBTとOSCEという試験があります。5年生から始まる病院実習の前に現場で医行為を行うための必要最低限の知識を見るためのテストです。CBTは、今まで学んできた基礎医学と臨床医学全ての知識を問われる、選択式のテストです。OSCEは実技試験で、聴診、打診、触診などの手技を実際に行えるか見られます。
5年〜6年
5年〜6年生は病棟実習を行います。数人で班を組み、全ての科を回りながら診察や手術について学んでいきます。同時に、卒業後の研修先の病院を決めるために、病院見学で自分の行きたい病院を見て回り、マッチングと呼ばれる就活を行います。
そして、6年生の最後には卒業試験と国家試験があります。
前期研修
大学を卒業して、研修医になると必ず二年間の前期研修を行うことになります。ここでもあらゆる科を回り、自分が何科を専門的にやりたいのか考えます。前期研修を終えた後は、一般病院に就職するも良し、バイトだけで生活するも良しですが、専門医を名乗るためには後期研修を受けなければなりません。
後期研修
前期研修を終えた後に、専門医の資格を取りたい人が後期研修を行います。後期研修は、特定の診療科でより診療能力を身につけるための期間です。科によって異なりますが、だいたい3〜5年です。この期間で修行を積んで、専門医の試験を受けて合格すれば晴れて専門医になることができます。
医学部を卒業してすぐに専門を決めるのではなく、専門科を最終的に決めるのは、二年間の初期研修を終えてからです。ですから、医学部入学前に特定の科への憧れが強すぎると、その科以外の科目に興味を持てずに苦労するかもしれません。どの科に行くにしても、他の科の知識も最低限持っていなければならないのです。