医学部の二年生になると、解剖実習が始まります。解剖実習は本物の人間の体をメスやピンセットを使いながら分解していき、人の体の仕組みを学ぶ実習です。
解剖実習は、医学生の一つの関門です。どのようなことをするのか、血が苦手な人でも大丈夫か、など実習の現実について書いていこうと思います。
どんなことをするの?
解剖実習では、四人一班になって一つのご遺体を切り開いて観察していきます。皮膚を丁寧に剥がし、脂肪を慎重に取りながら筋肉がどこにあるか、どこについているか。血管、神経はどのようにつながっているか、臓器や骨の位置関係などを見ていきます。
この時、それぞれ自由に解剖していくのではなく、毎回手順書が配られて、今日はどこを切ってどこを観察するかを指示されます。
手引書は以下の本を参考にしていることが多いようです。
解剖実習の手びき
だいたい三ヶ月の間、二日に一度くらいのペースで実習が行われます。
始まる時間は大学ごとに違いますが、僕の大学では昼ごはんのあと13時頃から始まりました。手順書に書かれているものを全て見ないと終われないので、帰る時間は班によって大きく変わり、早い班でも18時くらい、遅い班だと22時くらいにもなります。
誰の体を使うの?
ご献体を使わせていただきます。生前に医学部生の解剖実習に自分の体を使っても良いと献体登録を行ってくださった方のご遺体です。
提供してくださった方、そのご家族への感謝を忘れてはいけません。実習前には毎回黙祷をし、実習が終われば最後に納骨式があり、今は亡き方々と御遺族への敬意と感謝の念を捧げます。
血が苦手でも大丈夫?
医学部を志している受験生や、基礎医学にまだ足を踏み入れていない一年生の中には、血を見るのが苦手で実習を乗り切れるか不安な方もいるでしょう。
確かに、一番最初にご遺体を目の前にした時に、ショックで倒れる方もいますが一学年に一人いるかいないかです。倒れた人も、すぐに慣れて次の実習からは平気な顔をしていました。
ドラマで見るようなグロテスクな死体ではありません。ホルマリンの中で保存されるため、人間の体の生々しさは残っていないので初めて見ると驚くと思います。
きついのはホルマリンの匂いです。実習室はホルマリンの匂いで充満しており、その中で何時間も立ちっぱなしで手作業をしていると、体力的にも精神的にも辛いものがあります。しかし、この辛さも数週間経てばなんともなくなりますので安心してください。
注意点は?
一番しんどいのが実習時間が延びることです。実習時間を短くするには二つの方法があります。それは、
- 予習をする
- 細かいことにうるさい人と組まない
です。
まず予習ですが、予習はすごく有効です。どこのどの筋肉があるか、神経はどこを通っているかなどを実習が始まってから参考書で調べていると時間がいくらあっても足りません。実習が始まる前にしっかり予習を行ってから望んでください。
次に細かいことにうるさい人と組まない、ですが、これは何故かというと、解剖実習は見ようと思えば見れるところがいくらでもあり、それらを全部探していると全然進みません。その日のうちに全部見切れないと次の日に持ち越されるので、毎回深夜近くまで実習室にこもることになってしまいます。
細かい性格の人と組んで、実習の度にぶつかるのは面倒ですので最初から一緒の班にならないのが吉です。
何度も言いますが、献体提供してくださった方、そしてその御遺族の方々に感謝の念を忘れてはいけません。実習を重ねるごとに慣れが生じるのは仕方のないことですが、非常識な冗談は当然控えなければなりません。退学になりかねませんし、そもそも人として問題アリです。
解剖実習は大変な分、記憶に残り続けるのでとてもためになります。医学生の皆さん、三ヶ月間頑張ってください!