医学部は日本の大学の中で偏差値が最も高く、成績トップクラスの学生達が集まります。
偏差値は低くても60程度はあり、偏差値60ということは少なくとも受験生の中で上位約16%に属していないと合格できないということです。
医学部に入学するためには、激しい受験戦争を勝ち抜くために多い人で1日10時間以上もカリカリ勉強し続けます。(1日2~3時間の勉強で合格する人もいますが、ハッタリかガチの天才です。無視しましょう。)
飯、風呂、睡眠以外は全部勉強!ぐらいの覚悟で、ハタから見ると異常な程の勉強量をこなすのです。
受験生達は医学部合格という希望に向かって頑張るのですが、合格したからといって勉強から解放されるわけではないのが医学部の恐ろしさです。
大学合格がゴールではないと大人たちは言いますが、医学部に関しては本当にその通りで、入学してすぐ息つく暇なくその意味を身にしみて感じるはずです。
医学部の勉強量ははっきり言って異常です。
受験生が入学後に苦しまないためにも、何が異常だと思うのかを書いていきます。
医学部の異常な勉強量
医学部のカリキュラムは座学と実習で構成されています。
基本的に4年生までは座学中心で、5年生と6年生は実習が中心となります。
座学は中学校や高校の授業と同じで机に座って先生の授業を聴くスタイルです。
基礎医学と臨床医学に別れていて、基礎医学は解剖学や生理学といった病気を理解するための基礎となる人体の構造や仕組みを学び、臨床医学は循環器や消化器など医療の現場で実際に患者の診療と治療を行うための勉強をします。
基礎医学も臨床医学も、分野ごとに必ずテストがあります。他の学部のように最低何単位とればいいというものではなく、どの単位も落とせません。一つでも落とせば留年となります。
実習は実際に病院の中で、医師の後ろにくっついて手術を見学したり、患者を診察してカルテを書いたりします。病院の業務をこなしながら、卒業試験と国家試験の準備をする期間です。
実習は実習で大変なのですが、今回は机に向かう勉強、特に座学の大変さをお伝えします。
ポイントは、授業の多さと授業後に求められる自主勉強の多さです。
1日の授業がとてつもなく多い
医学生の1日の勉強時間は、受験時代と同じかそれ以上あります。
まず、授業数が半端なく多いです。
参考として、日本の最高学府である東京大学経済学部の一週間のコマ数をご覧ください。
一週間で12コマ、一日あたり平均2コマですね。文系学部はどこもだいたいこんな感じでしょう。1週間に数コマしかない学部もあります。
次に、とある医学部の一週間のスケジュールを見てみましょう。
見て頂くとわかるように一週間ほぼフルで詰め込まれています。義務教育の頃と同じぐらいの詰め込み具合です。あの頃の体育や家庭科のような息抜き科目はありません。そして、義務教育の時は一つの授業が50分程度でしたが、大学では1回90分です。だから1・2限となっており、約2倍の時間椅子に拘束されます。
上記のスケジュールは実は広島大学医学部医学科三年生の一週間です。別に忙しい医学部のスケジュールをわざとピックアップしたのではなく、どこの医学部もだいたい似たようなものです。
授業がツメツメなのは三年生だけでなく、一年生からフルコマです。教養時代からも月曜日から金曜日まで9~17時で授業がみっちり詰め込まれているのです。
さらにやっかいなのが座学の合間に入ってくる実習です。
この実習は病院実習のことではなく、解剖実習や生理学実習のような基礎医学に関連した実習のことです。例えば解剖実習では人体を解剖しながら座学で学んだ体の構造を実際に目で確認していきます。
実習はシラバス上では座学と同じく17時までとなっているのですが、余裕で17時を超えます。夜の22時頃までかかることもあります。
実習時間が長い上に、実習の数も異常なほど多いです。例えば二年生であれば、解剖実習が一週間に三回、その間に生理学実習や組織学実習が挟まり、一週間実習尽くしになります。尽くしといっても、実習だけではなくて座学もあります。
※五年生、六年生は授業はなくなりますが、その代わりに一日中病院実習です。当たり前ですが病院実習に関してはまったくシラバスの時間通りではありません。働いているお医者さんと同じように朝7時から感ファに出席したり、深夜まで手術を見学し続けることだってあります。
授業や実習が終わったあとはテストに向けてまたまたお勉強の時間です。
1日の自習時間が大学受験時代並みに多い
授業が終わった後はもちろん何をしようが自由です。普通の大学生のように部活に行くもよし、バイトをするもよし、デートに行くもよし、誰も止めません。
勉強するのは授業中だけで、授業をしっかり聞いてあとは遊ぶ!というのはメリハリがあって理想的ですが、残念ながら医学部のテストは授業をしっかり聴くだけでは乗り切れません。
大学で教壇に立つ教授は、東進ハイスクールや駿台教師のような教えのプロフェッショナルではありません。大学受験の時のようにテストに出るポイントを教えてはくれたりはしないのです。
また、大学受験の物理や数学のように理論やセンスで解ける問題はありません。知っているか知っていないか、純粋な暗記勝負です。
いったいどれくらい勉強すればいいのでしょうか。
1日の自習時間ですが、学年によって差があります。
多くの医学部で1年時は教養課程です。教養科目は正直なところそこまで勉強時間は盗られません。テスト1日前に数時間やれば全然間に合う科目もあります。授業数は多いですが、放課後に自由な時間がある程度あります。
二年生以降で医学の勉強が本格化してくると一気に勉強量が増えます。ここからが一般大学生と比べて異常に多いです。
まず、二年生では基礎医学を学びます。基礎医学のテストはたいてい大型の休み明けにまとめてあり、テストの週とその前の週くらいは、朝から晩まで勉強漬けになることでしょう。
下のグラフは難関大学に合格している受験生の1日あたりの平均勉強の統計ですが、医学生もテスト前になると1日8時間以上は余裕で費やすことになります。
三年生は、臨床医学です。大学によってカリキュラムは異なりますが、多くの大学で三年生はテストが各ブロックごと、だいたい二週間に一度テストがやってきます。大変そうに見えますが、三年生は割と楽で、基礎医学の時ほど一つ一つのテストの範囲が多くないので勉強は楽です。
四年生は、国家試験の前哨戦であるCBTが終わりにあります。医学生の一つの山場です。
CBTの範囲は、今まで習った基礎医学と臨床医学の全てで、受験者のほとんどが解く、クエスチョンバンクという問題集が一冊800問で、全部で四冊あります。これを二周か三周するのだから大変です。
問題集だけでなく、参考書も分厚い上にたくさんあります。
CBT受験前の医学生の本棚はこんな感じになります。
五年生、六年生は授業はなくなって病院実習になります。
授業はないのですが、CBTよりもさらに難しい国試と卒試が六年生の終わりにあります。
国試の勉強はCBTの5倍大変とも言われ、問題集、参考書共にCBTの比ではありません。
先ほどのクエスチョンバンクであれば、6冊に増えます。
さらに、授業がないため、多くの人がMECやTECOMという映像授業を各自で申し込んで受講します。実習に映像授業に問題集にと医者になる前の最後のステップが一番険しいのです。
卒後も続く勉強
国家試験に合格しても、まだゴールではありません。
国試に合格すれば、病院で研修医として働き始めることになるのですが、辛いことに実際の臨床の現場に出てから使う知識は、国試勉強で培った知識とはまた違います。
国試の知識が多ければ多少有利にはなりますが、新たに覚えなければならないことが大量にあるので、皆ほとんどスタートラインは一緒になります。
スタートラインと言いましたが、医者にゴールはありません。
研修の後には専門医になるための試験などもありますが、それもゴールではありません。
何年かおきに更新されるガイドライン、医学論文から得られる新たな知見、常に情報をアップデートしていかなければなりません。
勉強が終わることはないのです。
まとめ
医学部の勉強量は異常なほど多いです。「異常」と書きましたが、それは他の大学生と比べた場合の話で、医者になる者としてはこの程度の勉強量は普通のことです。
医学部とは、勉強を愛し、勉強に愛された者だけが入れる学部なのです。
もし、この記事を読んで医学部に入る気持ちが揺らぎ、迷いが出てきたのであれば相談に乗ります。
すぐには返信できないですが、できるだけのアドバイスをさせていただきます。
勉強を愛し、勉強に愛された者だけが入れる学部という言葉、とても気に入りました。素敵な表現ですね。
私は介護士なのですが、先日、医学知識の無さを露呈して恥をかいたことから、基礎知識は身に付けようと勉強を始めました。そうしているうちに、医師を目指す人はどのくらい勉強するのだろうと思い、検索していたら貴サイトを見つけたというわけです。どこまでやればいいのか判断しづらいのですが、これから頑張ります。
どうも失礼しました。